臨床的に物事がよく見えるようになるコツ

心理のコツ

はじめに

 ベテランのスタッフなどの見立てや介入に感心したり、事例論文を読んで鮮やかな介入や解釈に目から鱗が落ちたりする。こんな感じで自分もできるようになるのだろうかと特に新人の頃によく思っていました。経験がなかったり自信がなかったりすると、どこか遠い存在のこととして思えてきて、臨床経験を重ねれば物事がよく見えるのようになるのかなと漠然と思っていました。しかし臨床経験を重ねることとは曖昧なことです。そこで今回は臨床的に物事がよく見えるとはどのようなことなのかを考えてみたいと思います。

臨床経験を重ねることで得られるもの

 臨床経験を重ねることで得られるのは、事例の体験が積み重なっていくということです。つまりある出来事が起こったときにどういう結果になったかの経験値がたまっていくということです。成功も失敗も含めてすべての臨床体験が経験値として積み重なっていきます。臨床経験の年数によって経験値を測ろうとするのは、経験値の量を見たいからということがあるなもしれません。しかしもちろん経験値の多寡だけで物事がよく見えるかどうかは決まりません。

臨床経験を仮説へと変換する

 臨床の経験値を漫然と重ねていってももちろん物事はよく見えるようにはなりません。ここで大切になってくるのは、臨床経験を用いて仮説を立てて接するということです。これまで大学の授業や本や論文で学んだことに加えて、臨床経験を交えながら自分なりの仮説をたてて関わるように意識します。初回のアセスメントだけでなく、関わり全体を通して各回アセスメントを行うと言い換えてもいいかもしれません。

 長年同じ部署や職場にいると仮説が外れにくくなってきます。もちろん仮説が外れなくなるのは望ましい面もあります。しかし仮説が外れにくくなるということが、臨床的に物事がよく見える状態とはいえないと個人的には思っています。

仮説をたてることの効果

 仮説をたてることは、何かいつもと違うイレギュラーなことがあったときに気づけるために大切となってきます。いつもと違うことが起こったときに仮説がないと気づくことができません。心理療法で枠が重視されることと似ています。

 仮説をたてる上で大切なことは、より当たる仮説をもつことより(もちろんこのことも大切ですが)、常に違う何かに開かれていることです。違う何かに開かれるためには逆説的に、仮説をしっかりと持っていなくてはならないのです。

仮説を立てる際の注意点

 ただ気をつけなくてはならないのは、仮説が絶対的な基準になってしまうことです。仮説はあくまで仮説であって、ケースごとによって棄却される可能性もあります。経歴だけを重ねていくと正しさが自分の中にあるような気持ちになってしまいます。また初学者のうちでも、大御所の先生の言葉を絶対的なものとして関わると失敗することがよくあります。私も先生の受け売りをして失敗したことがよくありました。

おわりに

 臨床的に物事がよく見えるようになるというのは、臨床経験を重ねることだけでは十分でなく、臨床経験にとらわれない姿勢ということになります。しかしこのことは恣意的にもなりやすいので、スーパーヴィジョンや事例検討など自身を振り返る機会をもつことが重要となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました